広告・メディアを覆う「真実と嘘のパラドックス」

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21世紀の広告やメディア業界が抱えている矛盾

本来、広告やメディア業界の役割は「事実を広く伝えることで社会にとって有益な媒体となること」と考えられますが、インターネットの特性と人間の脳の特性が組み合わさった時、「真実」より「嘘」を優先してしまうインセンティブが働き、えてして発信者がその特性を利用してしまうことがあります。

この広告・メディアを覆う、「本来の役割」と「実際の行動」の乖離を「真実と嘘のパラドックス」と呼ぶことで、情報社会の何が問題で、どうすれば良いのかについて検討することが本記事の目的です。

広告・メディアが嘘をつく理由1「信憑性が薄い内容の方が書きやすい」

嘘をついてしまう一つ目の理由として、調査や取材を丁寧に行い信憑性の高い記事を書くより、ろくに調べないで適当に記事を書く方が簡単なので、結果的に事実と異なる「嘘」をついてしまうということです。

まさにこの記事自体もコタツの中で書けそうな「コタツ記事」に当てはまるものなので、全く説得力がないのですが(笑)、このような取材などに時間や労力をかけずに書ける記事というのは量産しやすく「質」より「量」を優先することで露出を高めることができます。

広告・メディアが嘘をつく理由2「人間は真実よりも嘘により反応する」

真実は概してつまらないものです。昔から繰り返し聞かされている事実は、特に注目を引きません。

逆に、今まで聞いたこともないような「真実」を聞かされると、いかがわしいと思いながらも、なんだかんだで好奇心を持って聞いてしまうことがあります。

映画やドラマなどのあらかじめ「仮想世界」と想定している場合はともかく、「現実がそうなのだ」と思い込ませる情報と出会ってしまうと、特に医療や健康などの個人の身体や生活に関わる内容は余計に大きな被害を与えてしまうリスクがあります。

真偽の疑わしい情報について常に科学的に判断できれば問題は起きにくいのですが、情報過多の現代は「どの情報が正しくて、どの情報が正しくないか」を考えるのが手間になってしまったりするなどで、気がつくと科学的に裏付けられてないことを事実のように信じ込んでしまうこともあります。

科学と陰謀論のソーシャルメディア上での拡散の違いを比較した研究では、陰謀論の方がより早く広く情報が拡散する傾向があるケースなども観察されています。

広告・メディアが嘘をつく理由3「特定の思考パターンを強化した集団をつくるため」

「国家」や「宗教」などの共同幻想を失い、それぞれの人がそれぞれの事柄を信じる社会では、人々が共有する理念がなくなり、一体感を感じにくく、孤独を感じることがあります。

「一緒に何かを信じられる仲間」がいる喜びを求めて、会社や学校を超えたコミュニティを求める人々のニーズが生まれます。最近流行りのオンラインサロンなどもその一例でしょう。

これは、特定の主張に賛同する読者を囲むニュースメディアなどにも共通している背景で、メディアの役割が「情報を伝えること」から「コミュニティを作ること」になりつつあるとも言えます。

インターネットを中心としたコミュニティの場合、お互いのことをよく知らないメンバーも多いため、対面なら違和感を感じることもスルーしたり、共通の興味で盛り上がる部分だけに注目してしまい、「エコーチェンバー」と呼ばれる先鋭的な集団が誕生することもあります。特定の思想を無批判に信用する集団はメディアにとって非常に扱いやすい「顧客リスト」にもなるので、いかにインターネットで共通の話題を生み出すかを追求した結果、現実的な感覚とは程遠いことが真実のように語られてしまうこともあります。

広告・メディアと、一般読者はそれぞれどうすればいいのでしょうか?

この質問は、明確な答えが出せてない状況だと考えらえます。

「公正で独立した第三者機関が情報の真偽をチェックする」といった方法や「人々が情報を判断できるメディアリテラシーを教育する」といった方法、「事実とかけ離れた情報を営利目的などによって流布する企業や団体に経済的・社会的制裁を与える」といった方法が考えられますが、どれも判断コストがかかるので、全ての情報に即座に適用できるのは簡単だとは思われません。

確実に言えることは、情報が膨大な現代社会は、知らぬ間に「嘘を嘘だと見抜けない」状況に陥ってもおかしくないということです。

この記事の内容を含めて、新しい情報を取り入れるときは、一呼吸おけると良いでしょう。

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